1977年頃、プログラムが磁気カードに記憶できるというHP-67が憧れでしたが、高嶺の花でした。
しかし、ヤフオクで結構安く出品されていたので、つい手が出て買ってしまいました。
バッテリーパックは無しで、ACアダプター付きの作動品です。
HP67の分解や、Card Readerの修理方法などは下記のサイトを参考にしました。
分解方法 HP-67 Card Reader Repair
https://www.hpmuseum.org/cgi-sys/cgiwrap/hpmuseum/articles.cgi?read=179
分解方法とクラッチに言及 Repairing the HP67
https://www.hpmuseum.org/guest/hoskins/67crfix.pdf
クラッチ修理を詳しく説明 HP-65 HP-67 HP-97 “Clutch” Fix
https://www.hpmuseum.org/repclutc.htm
![]() | (1) バッテリーパックの製作 色々解説を読むと、バッテリーなしでACアダプターで作動させると、カードリーダー回路が壊れるという説もあったので、先ずバッテリーパックを製作しました。 単三のニッケル水素電池(エネループ)をスポット溶接で繋ぎました。 |
![]() | (2) Card Reader のローラー交換 磁気カードを挿入しても吸い込まないので、ローラーの劣化と考え、Oリング式で交換することにしました。 思った通り、ローラーは完全に劣化していました。 |
![]() ![]() | Card Readerの構造は基本的にはHP82104Aと同じで、リードスイッチをカードが押し上げてモーターなどをONする方式です。 HP67の場合は、プラスチックのボール4個(φ3.2mm)で押し上げる方式です。 |
![]() | ローラーを交換した状態です。 使ったOリングはHP41CXのHP82104Aと同じで線径φ1.8mm,外径φ6.1mmです。 これを再組してテストしたところ、2回ほどは正常にカードを吸い込み、プログラムをロードできましたが、それ以降は送り速度が大きく変動し、最後には吸い込まなくなりました。 |
![]() | 上記の参考サイトから、モーター軸が滑っていると判断し、チェックしました。 先ず、Card Reader部分を取り外し、モーターを外部電源で駆動することにしました。 そのため、他に影響しないように関係する結線を取り外しました。 この状態で、外部電源から2.6Vをモーターに供給し、カードを送り込んだ時どうなるか確認したところ、思った通りモーターが空回りしていました。 |
![]() | モーターを取り外したところ、ウォームギャは抵抗なく抜けてきました。 これではトルクを伝達できません。 上に挙げた参考サイトの3番目はこの部分をクラッチと称しています。 アルミのパイプの中はゴム状のものが充填され、トルク伝達とダンパーの役目を果たすようです。 現状は、完全に硬化していました。 参考サイトでは、この硬化したものを取り去って、シリコンシーラントを充填するようになっています。 今回、この劣化した充填剤は除去せず、安易な方法ではありますが、硬化しても弾性があるゴム用の接着剤を使ってモーター軸を接着しました。 |
![]() | 修復後、モーターを取り付け、外部電源で駆動しカードを吸い込むことを確認した後、本体に組付けました。 カードは正常に読み込みプログラムをロードすることを確認しました。 修理は成功しました。 |
(3) バッテリーとACアダプターとの関係
ACアダプターは3ピンの出力で、本体の受け口は下のようになっています。
3ピンのうち、下側のピンはBatteryの + に繋がっており、カードリーダーのsenser ICに電圧を供給します。
上側のピンはCPU基板に繋がっています。
ACアダプターを差し込まないときには、銅板で下と上のピンが接続されているので、Battery電圧がCard ReaderとCPUに供給されます。
ACアダプターを差し込むと、銅板による短絡が外れ、下のピンには13.6V, 上のピンには5.4Vが供給されます。
従って、バッテリーが装着されていないとCard ReaderのICに13.6Vが入ってしまうことになります。 バッテリーなしでACアダプターを使うとReaderが壊れるというのは、このことのようです。
また、ACアダプターを使うと、バッテリーは13.6Vと高い電圧で充電されるようです。

修理 その2
HP67のカードリーダーの修理を先日行ったのですが、安易な方法だったのでモーター軸が滑って、カードを吸い込まなくなりました。
そこで、今回はしっかりと固定することにしました。
お勧めのシリコンシーラントではなく、硬化しても弾性があるセメダイン EP001Nを使うことにしました。
また、色々なサイトにローラー軸が偏芯させてあり、押しつけ力を調整できるとあるので、その真意も確認しました。
![]() | もともと充填してあった樹脂は硬化しており、簡単にほじくり出すことができ、ウォーム軸とアルミパイプを分離できました。 |
![]() ![]() | 0.2mmのピアノ線3本と、熱収縮チューブを使って、下図のようにウォーム軸とアルミパイプを同軸になるように組みました。 この状態で、セメダインを適量流し込んだ後、モーター軸を挿入しました。 |
![]() | モーター軸を挿入した状態です。 このセメダインは20分ほどで固まり始めるので、10分ほどしてから、熱収取チューブやピアノ線を外し、モーター定位置に固定し、ウォーム軸の先端をスラストを受けるボール球に当てて、軸芯を確保しました。 この状態で1日放置し、完全に固まるまで待ちました。 |
![]() ![]() | ローラー軸の偏芯の確認 ローラー軸です。 一見したところでは偏芯しているのは分かりません。 真上から拡大すると、わずかに偏芯していることが確認できます。その量は0.1mm程度と思われます。 今回は、押しつけ力が一番低くなる位置で軸を挿入しました。 この状態でも、カードの読み書きは問題なくできることを確認しました。 以上で、修理は完了です。 |